最終更新日:2019年04月01日

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情報リテラシー

情報リテラシーとは、『情報』とともに生きざるを得ない現代社会において、必須の能力である。『情報』を正しく使うための能力、それが情報リテラシーだ。

現代社会では、『情報』が溢れている。

『情報』とは何だろうか?

“情報”というキーワードでWeb検索をしてみると、『情報』という言葉の意味以外にも様々な実例としての情報が検索結果として表示される。『情報』というと、まず始めにコンピュータのイメージがわく人がほとんどなのではないだろうか。

その認識に拍車をかけているのが、高等学校で教科化された情報の授業の印象だろう。

2009年に出された高等学校学習指導要領(文部科学省ホームページ内資料)を確認してみると、情報教科は、「社会と情報」、「情報の科学」を科目として位置付けており、この引用のように情報機器情報通信ネットワークなどの言葉が踊っている1)

実際の授業においても、情報科目は、コンピュータの授業として行われているケースが少なからずあるのではないだろうか。

しかし、『情報』という言葉の意味を確認してみると、例えば以下のようなものが挙げられる。

デジタル大辞泉の解説
じょう‐ほう〔ジヤウ‐〕【情報】

1 ある物事の内容や事情についての知らせ。インフォメーション。「事件についての情報を得る」「情報を流す」「情報を交換する」「情報がもれる」「極秘情報」
2 文字・数字などの記号やシンボルの媒体によって伝達され、受け手に状況に対する知識や適切な判断を生じさせるもの。「情報時代」
3 生体系が働くための指令や信号。神経系の神経情報、内分泌系のホルモン情報、遺伝情報など。

情報(じょうほう)とは – コトバンクより引用2)

その他、

情報とは – IT用語辞典 Weblio辞書3)

など、Web検索だけで様々な情報が出てくるが、『情報』という言葉の意味では、コンピュータに限定されない。

『情報』という言葉には、コンピュータで扱う情報以上に、様々な内容があることがわかる。仮にここで扱う『情報』とは、内容、事情、方法などある事柄について知ることのできるありとあらゆるものと定義することができる。

この『情報』には、文字、絵、地図、音といった人間が近く認識できるものから、電波、電子配列など様々な形態があり得る。つまり、これらの全てを扱えるのがコンピュータの強みであり、現代の情報化社会が発展し得たのは、このコンピュータとそれらをつなぎ合わせたインターネットの登場によるものが大きい。

かつては、『情報』をやりとりするためには、手紙を送ったり、電話をしたり、を出版したり、テレビ番組を放映したりと、手間と時間がかかったり、一部の人間しか利用できなかったりとそれほど容易なものではなかった

それが、コンピュータとインターネットの普及に伴って、今では「誰もが」「いつでも」「どこでも」すぐさま「多くの」『情報』を扱えるようになった。それは、今まで以上に人々の生活と『情報』が密接に絡み合ってきたということも意味している。

「詳しくはWEBをチェック!」

というCMが流行り、インターネットを用いることによって、手っ取り早く多くの情報を知ることができるようになった。

実物を確認することは困難だが、実店舗に行かずとも、繋がるかどうかもわからない電話をかけるよりも、ずいぶんと簡単に『情報』を手に入れられるようになったものである。それどころか、ホームページの作成SNSへの投稿などを行うことによって、今まで一部の人間しかできることができなかった『情報』発信が「誰でも」簡単にできるようになった

すなわち、『情報』はみんなのものになったのである。

しかし、このような社会になったことによってメリットばかりが生まれたわけではない。大量の『情報』は、まさに溢れかえってしまった。その中には、真実もあれば、うそもあり、重要な『情報』もあれば、価値のない『情報』もある。

つまり、情報を正しく収集して、その真偽と価値を見極める能力が求められるようになったのだ。それどころか、コンピュータとネットワークの発達は、他人の権利をも容易に侵すようになった

コピペ不正な複製他人の写った写真や個人情報の流出など、故意に、あるいは故意でなくとも簡単に行うことができるようになった。さらには、全世界のコンピュータが繋がったことによって、悪意のある第三者による攻撃も行われるようになった。暴言をぶつけられたり、殴られたりといった直接的な攻撃は自覚できるが、インターネットから行われる攻撃は、自覚の無いまま多くのダメージを受けていることも多くある。これの怖いところは、お金を奪われることや実際の犯罪に巻き込まれることである。

このみんなのものになったが、同時に多くのデメリットも生まれた現代情報化社会の『情報』を正しく使うための能力が情報リテラシーである。

情報リテラシーには、大きく分けて2本の柱がある。

1本目は、情報倫理である。

すなわち、情報化社会の中で正しく生活をするための方法である。それは、様々なトラブルから自分自身の身を守るため情報セキュリティ情報モラルインターネットマナーなどである。

2本目は、情報活用能力である。

それは、その文字の通り、目的を達成するために情報を活かす能力である。文部科学省によると、以下のような定義をしている。

情報活用の実践力

課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力

第4章 情報教育:文部科学省より引用4)

すなわち、筆者は以下のような理解をしている。

この世の中に溢れかえった『情報』から必要な『情報』を収集し、

それらの『情報』の価値を判断し、

必要な『情報』を処理することによって、自分のものとし、

自分のものとした『情報』を必要な形に表現・創造し、

それを適切な形で発信、相手に伝達することによって、

目的を達成するための能力である。

このための一助となる技能がコンピュータを用いたWeb検索であったり、文書作成ソフトによる文書作成であったり、プレゼンテーションソフトによる発表だったりするわけだ。つまり、情報活用能力のメインになるのは、ソフトウェアの利用技術ではなく、ありとあらゆる『情報』を活用できる考え方判断力といえる。そういった考え方や判断力が身についていれば、コンピュータやソフトウェアが変わるといった環境の変化があったとしても、対応することができる。

ここで重要となってくるのが、最初に確認した情報の定義である。コンピュータによって得られる情報だけが情報では無かった。全ての情報、特に図書館での書籍の利用やフィールドワークにおけるデータ作成なども含めて、情報活用能力と見なすことができる。

特にインターネットによって玉石混淆の『情報』が溢れかえった現代において、情報担保の過程を持っている書籍が比較的正確な情報源として、改めて重要視されている

そういった点をしっかりと見据えて、情報リテラシーを身につけることが肝心である。このようにコンピュータを用いたものだけが全てではないとしつつも、コンピュータとインターネットによる情報化社会が大きな背景にあることは変わりない。これら2本の柱をしっかりと理解するために、コンピュータやインターネットといった情報技術の原理理屈ルールなどをしっかりと理解しておく必要がある。

つまり、情報技術の理解という土台の上に、情報倫理情報活用能力という2つの能力を身につけることこそが、情報が溢れた現代社会を正しく生きていくための情報リテラシーである


図1 情報リテラシーの模式的な理解

参考文献

1) 文部科学省. “高等学校学習指導要領”. 2009-03. http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/30/1304427_002.pdf, (参照 2017-03-30).

2) 株式会社朝日新聞, 株式会社VOYAGE GROUP. “情報(じょうほう)とは – コトバンク”. コトバンク. https://kotobank.jp/word/%E6%83%85%E5%A0%B1-79825#, (参照 2017-03-30).

3) ウェブリオ株式会社. “情報とは – IT用語辞典 Weblio辞書”. Weblio辞書. http://www.weblio.jp/content/%E6%83%85%E5%A0%B1, (参照 2017-03-30).

4) 初等中等教育局 参事官付課. “第4章 情報教育:文部科学省”. 文部科学省ホームページ. http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/gijigaiyou/attach/1259396.htm, (参照 2017-03-30).


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